名古屋地方裁判所 昭和40年(わ)1400号 判決 1967年10月24日
本店所在地
名古屋市中区栄二丁目四番七号
パチンコ遊技場、大衆食堂、喫茶店経営
株式会社 鈴木商会
右代表者代表取締役
加藤美恵子
本籍
名古屋市中区栄二丁目四〇九番地
住居
同市中区栄二丁目四番七号
会社代表取締役
加藤美恵子
大正一五年三月一五日生
右両名に対する昭和四〇年法律第三四号による改正前の法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官今井良児出席のうえ審理を遂げ、左のとおり判決する。
主文
被告会社を罰金四〇〇万円に、被告人加藤美恵子を判示第一の罪につき懲役四月及び罰金一〇〇万円に、判示第二の罪につき懲役六月及び罰金一五〇万円に各処する。
被告人加藤美恵子が自己の罰金を完納することができないときは、金五、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。
この裁判確定のから三年間被告人加藤美恵子の右各懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用はこれを四分し、その一を判示第一の罪につき、他の一を判示第二の罪につき、それぞれ被告人加藤美恵子の負担とし、残余の二を被告会社の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告株式会社鈴木商会は名古屋市中区栄二丁目四番七号(旧称同区栄町一丁目五番地)に本店を有し、パチンコ遊技場、大衆食堂、喫茶店等を営む資本金五〇万円の会社であり、被告人加藤美恵子は同会社の取締役として昭和三三年ころから同会社の業務全般を統括主宰していたものであるか、被告人加藤美恵子は同会社の業務に関し、同会社に対する法人税の一部を免れようと企て、
第一、同会社の昭和三六年一二月一日から同三七年一一月三〇日までの事業年度における同会社の実際の総所得金額は、別紙第一表の一の第一期所得総計算書記載のとおり、二、七九九万八、三三九円であり、これに対する法人税額は、別紙第一表の二の脱税額等計算書記載のとおり、一、一六〇万八〇八〇円であるのにかかわらず、虚偽過少の売上伝票を作成のうえ、実際の売上伝票を焼却するなどして売上の一部を公表から除外したり、受取利息、雑収入の計上を洩らしたりしてこれを架空人名義の銀行預金等にする一方、その預金の一部を仕入その他の公表しない経費に充当するなどの不正な方法により、所得の一部を秘匿したうえ、昭和三八年一月三〇日、名古屋市中区南外堀町六丁目一番地所在の所轄名古屋中税務署において、同署長に対し、右事業年度の総所得金額を七五三万三、一九五円、その法人税額は三二八万五、六一〇円である旨虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もつて詐偽の不正行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一、一六〇万八、〇八〇円と右申告税額三二八万五、六一〇円との差額八三二万二、二、四七〇円の法人税を免れ、
第二、同会社の昭和三七年一二月一日から同三八年一一月三〇日までの事業年度における同会社の実際の総所得金額は、別紙第二表の一の所得額計算書記載のとおり、三、二七一万七、八八九円であり、これに対する法人税額は、別紙第二表の二の脱税額等計算書記載のとおり一、三四五万〇、三〇〇円があるのにかかわらず、前同様の不正な方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和三九年一月二七日、前記名古屋中税務署において、同署長に対し、右事業年度の総所得金額を七六四万三、六一七円、その法人税額は三一〇万五、二一〇円である旨虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もつて詐偽の不正行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一、三四五万〇、三〇〇円と右申告税額三一〇万五、二一〇円との差額一、〇三四万五、〇九〇円の法人税を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき、
一、被告人加藤美恵子の第八回公判における供述(記録一、二一六丁、一二一九丁以下)
一、同人の検察官に対する供述調査書(40・8・4付記録一、一七二丁以下)
一、同人に対する大蔵事務官の質問てん末書三通(39・7・31付、40・2・22付、40・2・24付、記録一〇一六丁以下、一、一八四丁以下、一、一九二丁以下)
一、同人作成の上申書(同一、〇二二丁以下)
一、加藤文三郎の検察事務官に対する公述調書(同一五〇丁以下)
一、証人加藤吉朗、同加藤清の当公判廷における供述(同八八四丁以下、九六五丁以下)
一、第四回公判調書中の証人塩沢哲夫の供述部分及び同証人の当公判廷における供述(同五九三丁以下、六四三丁以下)
一、加藤吉朗作成の上申書二通(39・10・26付、40・1・25付、記録六七六丁以下、六八八丁以下)
一、同人に対する大蔵事務官の質問てん末書四通(40・1・26付、39・10・3付、39・10・9付、記録六九二丁以下、七〇四丁以下、七一九丁以下、七二一丁以下)
判示冒頭の事実につき
一、登記官藤沢豊作成の会社登記事項謄本及び登記簿抄本(同六一丁以下、六三丁)
判示第一、第二の各事業年度における被告会社の総所得金額及び所得秘匿の事実等につき(なお下記の証拠を総所得金額算出のための総損益金の内訳である個々の事実認定の用にも供していることは、別紙第一表第二表の各一記録のとおりである)。のうち売上の一部を公表から除外した事実の証拠として
一、被告人加藤美恵子に対する大蔵事務官の質問てん末書第四通(39・8・6付、39・10・5付、39・10・28付、39・11・2付、記録一〇二九丁乃至一〇七九丁)
一、加藤吉朗に対する大蔵事務官の質問てん末書(39・10・27付、記録一二二三丁)
一、証人植村輝三の当公判廷における供述(同八六五丁以下)
一、株式会社東海銀行本店営業部預金課次長作成の預金元帳写(同一八五丁乃至一五六丁)
一、株式会社三和銀行難波支店長名義の普通預金元帳写二通(各39・7・8付同二七三丁乃至一八六丁)
一、株式会社福徳相互銀行支店長名義の普通預金元帳写二通(39・10・23付、39・7・7付、同二七四丁乃至二八九丁)
うち受取利息を秘匿した事実の証拠として、
一、被告人加藤美恵子に対する大藤事務官の質問てん末書(39・10・6付、同一一五丁以下)
一、加藤吉朗作成の上申書(39・11・6付、同四三〇丁)
一、加藤吉朗に対する大蔵事務官の質問てん末書二通(39・10・13付、39・10・26付、同九二五丁以下、九三五丁以下)
一、株式会社三和銀行難波支店長名義の預金元帳等写(39・7・9付、同四二二乃至四一四丁)
一、株式会社神戸銀行名古屋駅前支店次長名義の預金元帳写(同四二四丁以下)
一、株式会社東海銀行大阪南支店長名義の預金元帳写六通(同四二八丁以下、四三三丁、四三五丁、四三六丁、四四三丁、一二四二丁)
一、株式会社福徳相互銀行難波支店長名義の預金元帳写二通(39・10・21付、39・7・7付、同四三一丁四三二丁、四三七丁以下)
一、右支店長名義の預金元帳等写二通(39・7・7付、39・10・23付、同四四九丁乃至四四四丁、一二四三丁以下)
一、前記売上除外関係の各証拠
うち雑収入を秘匿した事実の証拠として
一、加藤吉朗(3911・6)付、中島洲平作成の各上申書(同九三九丁以下、九四四丁以下)
うち仕入を秘匿した事実の証拠として
一、被告人加藤美恵子に対する大蔵事務官の質問てん末書二通(39・10・30付、39・11・7付、同一〇八〇丁以下、一〇八九丁以下)
一、佐藤三次郎、林耕作、佐藤鐘由、鈴川庫次、日比信夫、大岡幸一郎、日比野釘一、伊藤進、岡田徳太郎、坂井弘巳、須崎敏子、伴野紳、佐藤陸次郎、東川長吉、飯田太四郎、森きん、北村芳朗、西尾庄太郎、水谷信俊、林集三、杉本久子、山田国雄作成の各上申書(同二九〇丁乃至三三七丁、三四一丁乃至三八五丁)
一、山本初子、鈴木繁一に対する大蔵事務官の各質問てん末書(同三三八丁以下、三八六丁以下)
一、青山富雄の検察官に対する供述調書(同三八九丁以下)
うち支払利息を過大に公表した事実の証拠として
一、加藤吉朗作成の上申書(39・10・26付、同一二二六丁以下)
一、押収してある総勘定元帳二冊(昭和四二年押第二九〇号の一、二)
うち給与の支給を秘匿した事実の証拠として
一、被告人加藤美恵子作成の上申書(39・10・30付、同一〇九八丁以下)
一、同人に対する大蔵事務官の質問てん末書(39・11・10付、同一一一九丁以下)
一、古市雄三、大脇圭準、植村輝三、笠原繁儀、青山富雄に対する大蔵事務官の質問てん末書五通(同三九五丁乃至四〇八丁)
一、証人小島岩夫の当公判廷における供述(同六七〇丁以下)
うち修繕費の支出を秘匿した事実の証拠として
一、被告人加藤美恵子作成の上申書(39・10・30付、同一〇九八丁以下)
一、同人に対する大蔵事務官の質問てん末書(39・11・10付、同一一二二丁以下)
一、加藤吉朗(39・10・9付)、森岡定次郎作成の各上申書(同九〇八丁以下九二一丁以下)
うち営業諸経費及び公租公課の各支出並びに減価償却をそれぞれ秘匿した事実の証拠として
一、被告人加藤美恵子に対する大蔵事務官の質問てん末書(39・11・12付同一一三〇丁以下)
一、大蔵事務官作成の減価償却費並びに繰延費用計算書(同四〇九丁以下)
一、大蔵事務官作成の未納事業税計算調書(同四五〇丁以下)
判示第一、第二の各事実のうち各事業年度の公表所得額及び虚偽過少の確定申告書提出の事実につき
一、大蔵事務官作成の証明書二通(同一〇四丁乃至六五丁、同一四九丁乃至一〇五丁)
(確定裁判)
被告人加藤美恵子は昭和三八年九月三日名古屋簡易裁判所で道路交通法違反の罪により罰金三、〇〇〇円に処せられ右裁判は同月一八日確定したものであつて、この事実は検察事務官作成の前科調書並びに同被告人の検察官に対する昭和四〇年八月一四日付供述調書によつてこれを認める。
(法令の適用)
法律に照すと、被告人加藤美恵子の判示第一及び第二の各所為は、いずれも昭和四〇年法律第三四号附則第二条第一九条により、同法による改正前の法人税法第四八条第一項第二一条第一項に該当し、被告株式会社鈴木商会においては、右各所為につき、これ等各法条の外、右改正前の同法第五一条第一項所定の責任を負担すべきところ、被告人加藤美恵子に対しては、判示各罪につき、いずれも所定刑中懲役と罰金との併科刑を選択し判示第一の罪は前記確定裁判のあつた道路交通法違反の罪と刑法第四五条後段の併合罪なので、同法第五〇条によりまだ裁判を経ない判示第一の罪についてさらに処断することとし、その所定刑期および金額の範囲内で被告人加藤美恵子を懲役四月および罰金一〇〇万円に処し、判示第二の罪につき、その刑期および金額の範囲内で同被告人を懲役六月および罰金一五〇万円に処し、右の各罰金を完納することができないときは、刑法第一八条により金五、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置し、なお情状により同法第二五条第一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間右の各懲役刑の執行を猶予することとし、被告会社に対しては、判示の罪が同法第四五条前段の併合罪の関係にあるから、同法第四八条第二項を適用し、各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金四〇〇万円に処し、訴訟費用は、刑事訴訟法第一八一条第一項本文を適用して、主文末項記載のとおり、これを被告人両名に負担させることとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 堀端弘士 裁判官 松島茂敏 裁判官 上田誠治)
第一表の一 第一期(自、昭和三六年一二月一日 至、同三七年一一月三〇日)所得額計算書
総所得金額 二七、九九八、三三九円
うち公表所得金額 七、五三三、一九五円 {益金公表額 三八五、四〇六、三三九円
損金公表額 三七七、八七三、一四四円
うち秘匿所得金額 二〇、四六五、一四四円 {益金秘匿額 七二、〇二四、五一七円 損金秘匿額 五三、〇七六、七二四円 損金過大公表犯則額 一、五一七、三五一円
総益金 四五七、四三〇、八五六円
総損金 四二九、四三二、五一七円
<省略>
以上益金合計
四五七、四三〇、八五六円 益金公表金額合計 三八五、四〇六、三三九円
益金秘匿金額合計 七二、〇二四、五一七円
<省略>
以上損金合計
四二九、四三二、五一七円 損金公表金額 三七七、八七三、一四四円
損金秘匿金額 五三、〇七六、七二四円
損金過大公表犯則額△一、五一七、三五一円
第一表の二 第一期(自昭和三六年一二月一日 至同三七年一一月三〇日)脱税額等計算書(記録一、二七〇丁)
<省略>
第二表の一、第二期(自昭和三七年一二月一日 至同三八年一一月三〇日)所得額計算書
総所得金額 三二、七一七、八八九円
うち公表所得金額 七、六四三、六一七円 {益金公表額 三七八、〇五七、一三四円 損金公表額 三七〇、四一三、五一七円
うち秘匿所得金額 二五、〇七四、二七二円 {益金秘匿額 八二、一六三、〇〇五円 損金秘匿額 五八、六五一、九一六円 損金過大公表犯則額 一、五六三、一八三円
総益金 四六〇、二二〇、一三九円
総損金 四二七、五〇二、二五〇円
<省略>
以上益金合計
四六〇、二二〇、一三九円 益金公表金額合計 三七八、〇五七、一三四円
益金秘匿金額合計 八二、一六三、〇〇五円
<省略>
以上損金合計
四二七、五〇二、二五〇 損金公表金額合計 三七〇、四一三、五一七
損金秘匿金額合計 五八、六五一、九一六
損金過大公表犯則額合計 △ 一、五六三、一八三
第二表の二、第二期(自昭和三七年一二月一日 至同三八年一一月三〇日)脱税額等計算書(記録一、二六七丁)
<省略>